新年を迎えまして、皆様いかがお過ごしでしょうか?
本年もゴミ問題解決のため、精一杯活動して参りますので、BYEゴミプロジェクトをよろしくお願いいたします。
さて、今回はBYEゴミプロジェクト初のインタビュー記事になります!お相手は青森県で古紙リサイクル事業を行っている株式会社伸和産業の取締役業務部長太田康仁様(以下敬称を省略させていただきます)です。日頃から気になっているリサイクル事情について教えていただきました。ここからは対談の様子をそのまま掲載致しますので、ぜひお楽しみください。
以下、取材者であるBYEゴミプロジェクト代表の渡辺愛子は渡辺と記載致します。
地域と共に歩む
渡辺
最初に伸和産業の事業について説明をお願いいたします。
太田
私ども伸和産業は、青森県弘前市の本社を中心に、青森県の津軽地方と秋田県北部の大館市、鹿角市、北秋田市で古紙のリサイクルの仕事をしています。
スーパーなどの事業所から段ボールや古新聞、古雑誌などの古紙を回収して、工場で選別・梱包をして、製紙会社に販売しています。また、学校や町会で行っている集団回収活動での回収や、行政回収された資源物の受け入れも行っています。
皆さんの身近なところでは回収先のスーパーに古紙回収ボックスを置かせてもらって、家庭から出る古紙の回収も行っています。
当社の各営業所に、家庭からの古紙の持ち込みができる【古紙リサイクルセンター】も開設していますので、是非ご利用ください。
資源をゴミにしない
渡辺
早速ですが、リサイクルについて質問させていただきたいと思います。
リサイクルしやすいゴミの捨て方について教えてください。
太田
【リサイクルしやすいゴミの捨て方】ということで、少し神経質な話になりますが、古紙、アルミ缶、ペットボトルなどリサイクルするもの、これらは全てゴミではなく資源です。
私たちは、新しい製品の原料である資源と、あとは燃やすか埋め立てるしかないゴミをはっきりと区別して呼んでいます。
渡辺
ゴミではなく資源ですね
資源をリサイクルしやすくする取り組みはありますか?
太田
家庭でゴミを分別する時はアルミ缶やペットボトルは燃えるゴミに混ぜることなく、アルミ缶の日、ペットボトルの日に出していますよね。古紙も同じように分別すれば資源になるのですが、燃えるゴミに混ざっている紙は凄く多いです。「混ぜればゴミ、分ければ資源」という当業界のスローガンがあります。まず、しっかりと分別していただくということが第一です。見た目で燃える 、燃えないではなく、リサイクルできるかどうかということで分別していただくということが大事です。
渡辺
「混ぜればゴミ、分ければ資源」ですね。分別の大切さがわかりました。
分別するうえでのポイントなどありますか?
太田
古紙を分別するうえで、皆さんが紙だと思っているものの中に、実は紙ではないとか、紙だけどリサイクルができないものがあります。これらは禁忌品と呼ばれています。
禁忌品というのは、製紙工場で紙すきを行う工程で再生された紙製品に悪影響を与えるもので、私たちリサイクル業者が手作業で除去しています。
渡辺
紙製品に悪影響というと?
太田
製紙工場で紙を作るときに、「パルパー」という巨大な洗濯機のような機械に古紙を入れて、繊維になるまで溶かします。繊維は「スクリーン」という機械でゴミなどを除去し、「フローテーター」という機械でインクを除去し紙の原料パルプになります。
水に溶けないものや設備で除去しきれない異物が古紙に混ざると、製紙工場の生産ライン全体が止まることになります。
渡辺
禁忌品とはどういうものなのでしょうか
太田
暮らしの中で身近な禁忌品の代表は、食品の汚れがついた紙ですね。油汚れや、食品残さが付いた紙は、古紙の保管中にカビが生えたり、製品の油じみや汚れの原因になったります。また、臭いがついている洗剤や線香の紙箱も禁忌品です。臭いの成分が、紙を作る工程の中で除去ができないので、紙製品に臭いが残ってしまいます。
また、アイスのカップなど防水加工が施されている紙は水に溶けないので禁忌品です。
溶解しても繊維が取れない、シュレッダーなどで細かく裂いた紙も禁忌品になる場合があります。他には、金紙や銀紙、アルミ箔がついているものも禁忌品です。再生紙にしたときに金属反応が出てしまうためです。
これらの他にも禁忌品はありますが、製紙工場がどういった紙製品を作っているかによって使える原料や禁忌品になるものが違います。
渡辺
製紙工場ごとに原料や禁忌品の違いがあるのですか?
太田
製紙工場でどの紙製品を製造しているか、例えばダンボールはダンボール用紙工場で原料になりますが、新聞用紙の工場では原料になりません。
製紙工場によっては溶けづらい紙専用の設備を持っていたり、高性能な除去設備を導入していたり、少しでも原料として扱える努力をしています。住んでいる地域によって禁忌品が異なる場合があるため、古紙問屋や回収業者、自治体の窓口に問い合わせてください。
古紙をゴミにせず、私たちプロのところに資源として送り出してもらうことが大事です。
渡辺
例えば、段ボールについているホチキスも紙ではなく金属なので、禁忌品になるのでしょうか?
太田
厳密に言えば禁忌品ですが取らなくて大丈夫です。ホチキスなど比重が重いものは、紙を溶かす過程で水の中に沈むので、ついたままで大丈夫です。
渡辺
シュレッダーにかけた紙も禁忌品なんですね。そのまま古紙回収に出すのは不安な書類もあると思いますが。
太田
郵便物などの個人情報や企業の重要書類はもしも情報が漏れたらと不安を感じるでしょう。当社では機密文書リサイクル事業を扱っています。市販のオフィスシュレッダーは紙の繊維を細かく切り過ぎてしまい、再生紙を作るときに必要な紙の繊維まで細かくしてしまう欠点があります。当社をはじめとしたリサイクル業者のシュレッダーは、紙を「切る」のではなく、「千切って押しつぶす」ことで繊維を残したまま、機密情報をきちんと抹消するという利点があります。機密抹消もリサイクルも、どちらも重要な事です。
深刻な人手不足はリサイクル業界にも
渡辺
リサイクル事業に携わる上で最近、課題と感じていることを教えてください。
太田
私たちの仕事は、エッセンシャルワークです。ゴミにしても資源にしても、人々が生活する上で必ず排出するものです。
例えば、食料品を扱っているスーパーはもちろんエッセンシャルワークですが、スーパーは品出しのときにダンボールや雑がみが出ます。それを回収するのが私たちの仕事です。古紙が溢れないよう365日バックヤードから回収しないと、スーパーは営業できず街の機能が失われてしまうということになります。病院や役場でも同じことが言えます。
当社だけでなく、同業者全体で街の機能を維持するために毎日仕事をしています。そんな中で新型コロナウイルス感染症が発生し、社員が感染しても仕事がきちんと回るように、という体制を作っています、人手が足りない時はやっぱりあります。
渡辺
人手不足が課題ですか
太田
これは当社に限らないと思いますが、新たにトラックに乗りたい人が減ったと感じています。若い世代の地方からの流出や、トラックに乗るための免許取得のハードル、そもそも触れるきっかけがなく仕事がイメージしづらいなど原因は様々だと思います。
この仕事は形が多少は変わるかもしれませんが、10年先20年先の未来も人の生活に必要な仕事です。こんな仕事があるんだって興味を持っていただきたいです。若い人が飛び込んできて一緒に業界を盛り上げてくれれば嬉しいです。
資源循環の輪を繋ぐ
渡辺
今からできるリサイクル関連で私たちにできることを教えてください。
太田
リサイクルは、資源の循環、つまり輪になっています。製紙工場が紙を作って、消費者の皆さんが紙を使って、使い終わった紙を私たちが資源として回収して、製紙工場にもどす、この循環がリサイクルです。この循環の輪を維持するためには、私たちが頑張るだけでも、製紙会社が頑張るだけでもダメで、そこで皆さんの協力が必要になってきます。
資源をゴミにすることなく、きちんと分別して出していただくことは大事です。しかしそれだけではなく、再生資源を利用して作られた紙製品を選んで購入していただくことがリサイクルにとって重要です。消費者の皆さんが木材を伐採してパルプから作られた紙だけを購入すると、古紙が原料として使われず行き場を失って、資源ではなくゴミになってしまいます。だから、ノートやコピー用紙、トイレットペーパーを購入する際に、古紙配合率の表示やグリーンマークがついている製品を選んで購入してください。
渡辺
最後になります。記事を読んでいる皆さんに一言お願いいたします。
太田
日本は昔から資源を大切にする国だったようです。平安時代から古紙をすき直して作った紙(薄墨紙)があったそうなので、古紙リサイクルというのは1000年以上もこの国の文化に根付いています。リサイクルは全国どこにいっても、資源を分別してリサイクルするという流れができていので、このことを次世代につないでいく、というのが大事だと思います。
最近ではSDGsが小学校の授業でも扱われるくらい認知されてきています。SDGsとリサイクルということにおいては、改めて何か始めよう、ということよりも、今まできちんとやってきたリサイクルをきちんと次の世代までつないでいくことが大事だと思っています。
ゴミは生活する上で必ず出るものなので、面倒くさがらず少しだけ手間をかけて、ゴミを減らして資源を取り出すことにご協力いただければと思います。
渡辺
ー資源循環の輪を次世代につなげていきたいですね。本日はありがとうございました。
執筆者
BYEゴミプロジェクト代表
渡辺愛子
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